「放置自転車等対策推進税条例」に対する鉄道事業者としての意見
2003年12月9日
東日本旅客鉄道株式会社
東武鉄道株式会社
西部鉄道株式会社
帝都高速度交通営団
東京都交通局
1.新税条例の問題点について
「自転車の安全利用の促進及び自転車等の駐車対策の総合的推進に関する法律」では、鉄道事業者に「協力義務」を定めていますが、それ以上の法的強制、負担義務は課していません。「課税して強制的に負担させる」という構想は、上位規範である「自転車法」を超えたものであり、違法であると考えます。
  • 鉄道事業者は、これまで「自転車法」に則り、放置自転車等問題の解決に取組んできました。「自転車法」においては、「自転車等駐車場」(以下、「駐車場」とします。)の整備に関する鉄道事業者の義務の程度は協力義務としており、これまでも、駅周囲の土地の提供など、可能な限りの協力を行っています。一方で、この「自転車法」には、「駐車場」の設置や放置自転車等の撤去の費用負担を鉄道業者に強制する規定は存在していません。条例は、課税という手段で「自転車法」に定める協力業務を超えて鉄道事業者に金銭負担を強いるものであり、「自転車法」の規定をふまえていない違法なものと考えます。
    条例は、自転車利用者の7割が鉄道利用者だという一部の調査結果をもって「鉄道事業者のみ」に課税する構想です。しかし、鉄道利用者以外の自転車利用者が存在することは明らかであり,税制の基本である「公平性」という視点から問題があると考えています。
  • これまでの豊島区の説明によれば、自転車等放置者や「駐車場」利用者の7割が鉄道利用者であることを理由に、鉄道事業者への課税を正当化しています。しかし、そもそも鉄道は最終目的地へ向かうための交通手段に過ぎません。また、鉄道利用者以外の自転車等放置者や「駐車場」利用者がいることは明らかであり、鉄道事業者だけに課税することは税の公平性に明らかに反します。 課税原則である「応益課税の原則(受益と負担との関係が明確になること)」に照らして,負担側となる鉄道事業者の「受益」が不明です。 法定外目的税として成立するには、「受益」と「負担」との関係が明確にされる必要があります。当初、豊島区は、鉄道事業者が自転車等利用者から巨額の利益を得ていることが「受益」であるかのように主張していましたが、後には、豊島区が実施した放置自転車等対策によって少なからず「受益」を得ているという表現に変わってきましました。
    自転車等利用者からの運賃収入が「受益」であるという主張は、そもそも、お客さまは自転車等を利用するか否かにかかわらず鉄道を利用されるので特段の運賃収入増加につながるわけではなく的外れです。また、区が自転車等を撤去することで、本来は鉄道事業者が撤去費用にあてるべき費用を回避したこと等が「受益」というなら、そもそも、鉄道事業者には放置自転車等を強制撤去する権限は与えられておらず、そのような関係は成立しません。むしろ、鉄道事業者といえども諸税を納めており、地域住民と同様に自治体の一員として行政施策である放置自転車等撤去の効果を享受できると考える方が自然であると考えます。以上のように、課税の前提である「応益原則」が明確になっていません。 新税が導入されれば他の自治体が同様の課税を実施する可能性が高いことは用意に想像できます。この場合、鉄道事業者の負担額は軽微なものには収まらず、全国の鉄道輸送事業に大きな影響を及ぼすおそれがあります。
  • 法定外目的税の導入にあたっては地方税法第733条に定める3条件(著しく過重でないこと他)を充たす必要があります。この条件のうち負担の過重の問題に関し、「豊島区法定外税検討会議専門委員会」(以下、「専門委員界」とします。)がまとめた「豊島区の法定外税に関する報告書」(以下「報告書」)では、鉄道事業者への負担は過重ではないとしています。しかし、条例が実施された場合、同様の課税を他の自治体でも実施する可能性は極めて高いことが予想されます。この場合、鉄道事業者の負担増は著しいものとなり、全国の鉄道事業者に大きな影響が発生することは避けられません。新税構想は、単に豊島区の問題であるだけでなく、全国の鉄道運送事業に波及するものであり、慎重な検討を要するべきものです。

2.放置自転車等問題への対応について

放置自転車等問題にはさまざまな対策の検討が必要です。新税を導入する以前に取組むべきことがあるのではないでしょうか。
  • 放置自転車等問題は、第一には自転車等を放置する方のマナーの問題です。
    区が行うべきことは、「課税ありき」の論議ではなく、「駐車場」の利用率を向上させるなど、放置自転車等対策に効果を上げている他の自治体の例も参考にしながら、自転車等の放置行為自体を減らすにはどうすれば良いかを考えることです。
  • 「自転車法」によれば、自治体は、自転車等の駐車対策協議会(以下、「協議会」とします。)を設置することができます。しかし、豊島区は今までこれを開催していません。「協議会」の開催は、「報告書」でも、取り上げられています。豊島区は、条例を実施する前に、まず「協議会」を通じて、話し合いを行うべきと考えます。
  • 平成15年11月11日付総務省自治税務局長通知の留意事項では、新税導入に際して、税以外の適切な手段を十分に検討することを求めています。一方、「報告書」の結論を見れば、「専門委員会」や豊島区が、真の原因者である自転車放置者への対策など、他の手段の検討が行われていないことは明らかです。つまり、税以外の適切な手段の検討が欠落しています。
これらの問題点をあわせると、豊島区は自転車等の放置行為そのものの削減に向けた基本的な姿勢に疑問を感じざるを得ません。

3.鉄道事業者としての取り組みについて
これまでも、鉄道事業者は「自転車法」に則り、放置自転車等問題に取組んできました。今後も、その努力を継続します。
  • 報告書」では、鉄道事業者の協力実績は十分ではないとしています。しかし、用地事情が著しい都市部での新規用地提供を含めて、可能な協力は行ってきています。各鉄道事業者は、全社的に、自治体への用地の提供や「駐輪場」の運営等、可能な限りの協力を行っており、今後もこれらの取り組みを続けていきます。
以上
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